断片小説 ドア
窓ガラスのドアは押しても引いても開かない。
ドアの向こうでは新一年生の息子と父親が店番をしながらバベルの塔の青の面を解いている。
カニ時計が三時の泡を噴いたので、二人は散歩に出かける事にした。
父親は、ドアをカクッと斜めにずらし、横に引いた。息子にはこの技はまだできない。
駄菓子屋で激渋茶を三リットルと丸カステラパンを2つ買い、カニスタンプとお釣りを受け取るとベンチに座って軟派を始めた。
夕刻を告げる曲が流れ出す。
「ははは。今日も軟派失敗だな」
父は激渋茶の蓋をしめ、丸カステラパンを空高く放った。
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